小菅の湯薪ボイラー、W受賞

小菅の湯薪ボイラー、W受賞

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小菅の湯・薪ボイラー利用に関する取り組みが評価され、R6年度新エネ大賞「新エネルギー財団会長賞」、R6年度脱炭素チャレンジカップ「奨励賞」を受賞

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2025年1月29日、授賞式にて。左から小菅の湯支配人・村上さん、小菅村村長・舩木さん、小菅村地域林政アドバイザー・大野

山梨県小菅村の温浴施設、小菅の湯・薪ボイラー利用に関する取り組みが評価され、R6年度新エネ大賞「新エネルギー財団会長賞」、R6年度脱炭素チャレンジカップ「奨励賞」を受賞し、W受賞となりました。調査開始から設計、導入、運営と取り組んできた6年間。
今回、こうして第三者に評価を頂けたことを、大変嬉しく思います。

この成果を実現した立役者を薪ボイラー導入前と、導入後に分けると、まず、導入前については、導入を決断して頂いた舩木村長、小菅村役場、(株)源の皆さん、調査段階から一緒に検討を行って来た(株)源・フォレストアドベンチャーこすげの関口くん(小菅村地域おこし協力隊OB)、小菅の湯支配人・村上さん、やまなし木質バイオマス協議会・志沢さん、基本設計から実施設計、導入工事(電力・配管系統)までサポート頂いたナチュラルフレイム・大島さん、ハード補助申請から施工管理を強力にサポート頂いた(株)森のエネルギー研究所、小川さん、工事段階ではヤード工事でお世話になった丸一土建さん、薪ボイラー本体、貯湯タンク及び太陽熱温水器の導入を担当した(株)森の仲間たち・森さん、既存ヒートポンプ設備撤去、薪ボイラー建屋、温水配管、電気工事を担当頂いた長田組土木さん、柏設備さん、秋山電気さんの尽力があります。
また、導入後については、薪ボイラーの運用に対して常に愛を持って対応頂いた(株)源、小菅の湯支配人の村上さん含め小菅の湯スタッフの皆さん、燃料となる間伐材を搬出し、木の駅こすげへ輸送頂いた北都留森林組合、青柳林業など林業事業体の皆様、軽トラで出荷頂いた山林所有者の皆さん、木の駅で原木の受け入れ、薪加工、乾燥、保管を担っている(株)源スタッフ、フォレストアドベンチャースタッフの皆さんの尽力があり、実現出来ました。
自分はリトル・トリーとして、薪ボイラー導入に向けた調査(経済性担保、サプライチェーン確保)を平成30年に開始し、基本設計を平成31年、実施設計を令和2年、令和3年に導入工事までの支援を行い、令和4年の稼働開始から、小菅村地域林政アドバイザーとして、間伐材の安定供給に向けた森林管理、整備事業のセッティング、光熱費削減データの分析、視察対応と、地方創生事業にて進めている森林空間利用との接続などの役割を担って来ました。改めて、皆様に対して感謝を申し上げます。ありがとうございます。

以下は、新エネ大賞受賞の概要書です。

再生可能エネルギー、自然エネルギーの利点は、エネルギーを利用する地域(オンサイト)でエネルギーをつくることです。これは既存の中央集権型のエネルギー体制と比較すれば、地域に根ざした分散型であるという点で、存在意義とも言えるでしょう。

2011年、東日本大震災で被災した岩手県・大槌町吉里吉里の支援で、被災材を薪ボイラーの燃料とし、避難者が入浴する温浴施設提供の活動を行っていた時、エネルギーは「日常」で、「当たり前」ではないことを痛感しました。この時の活動は、化石燃料は道路寸断によって供給されず、送電線と電柱は倒れ、電力は供給されない状態が続いていました。普段、当たり前と思って享受している「日常」は、実は地域外から運ばれてくるエネルギーとそれを支える壮大なインフラによって支えられていたことを実感したのです。このことは、2012年、オーストリア・ウェルズで開催されたWorld Sustainable Energy Daysで、全世界を対象として再エネに関わる若手リサーチャーが取り組みを発表する機会であるWSED NEXTでも発表の機会を頂きました。

一度、激甚災害が発生すれば、その日常は一瞬で破壊されてしまう。その時、どうすればいいのか?どうやって、生きるために必要なエネルギーを確保すればいいのか?人間は、エネルギーがなければ、生きていけない。

そうした状況で、周囲にある自然資源(木質バイオマス、太陽光、太陽熱、水力、風力等)に着目し、適切なエネルギー変換装置を導入することで、熱や電力を災害時でも持続的に生み出せる可能性がある。逆に言えば、周囲にある、近くにある資源だからこそ、供給インフラが寸断されても、外から運ばれてくるエネルギーに頼らなくても、エネルギーをつくることができる。もちろん、そうしたエネルギーは災害時のみではなく、通常時もエネルギーを供給し続ける。これこそ、再生可能エネルギーの特徴であり、利点であると思います。
地域で消費するすべてのエネルギーを自給することは困難でも、既存のエネルギーと再生可能エネルギーを組み合わせ、災害拠点など緊急時にエネルギーが必要な場所に集中して再生可能エネルギーを導入することで、日常時と緊急時のエネルギー供給で発生するギャップを平準化できます。

今回、取り組みとして評価された点は、薪ボイラーを軸とした複数の再エネ機器のミックスです。
災害時の避難拠点である小菅の湯で、薪ボイラー、太陽光発電・蓄電池、太陽熱の3種を組み合わせ、自立運転による避難者への入浴機会の提供を実現するために、停電時でも蓄電池にチャージした電力で薪ボイラーやポンプを稼働させ、オフグリッド運転が可能なことです。
それ以外に強調したい点を以下に幾つか挙げておきます。

・東京都水源の森林整備で発生する、これまで利用されていなかった、間伐材を活用していること。
・地域の林業事業体、山主さんが持ち寄る間伐材を購入し、薪に加工していること。
・5年〜10年以内に達成する予定だった光熱費50%削減を、2年目で45%削減を達成したこと。
・小菅の湯盆踊り、森林空間利用、視察ツアーなど地方創生の取り組みと連携していること。

これらの取り組みを今後も推進し、川上から川下まで、森林からエネルギーまで、供給から需要まで、総合的な村の循環、地域経済の発展を目指し、貴重な協力者、支援者の皆さんと共に頑張っていきたいと思います。ハードやシステムも大事ですが、それよりも重要なのは、ソフトであり人材、一緒に目標へ向かって走ることができる、意欲に満ちた人と組織です。この両輪が揃わなければ、成功は実現しません。それが、小菅村にはあります。自分はそれこそが、小菅村の魅力と思っています。

そして、森林からエネルギーまで領域を跨ぐ仕事が出来るようになったのは、道志の湯・薪ボイラー導入から運営、森林経営計画による森林管理・整備など、道志村で行って来た10年間の経験と、その機会を与えてくれた道志村のお陰でもあります。

今後も、森林整備、木材活用(マテリアル、エネルギー)、森林空間利用の三位一体による森林業、OPEN FORESTの構築を目指して取り組みを進めていきます。

脱炭素チャレンジカップの二次審査向け資料として、導入時に作成した小菅の湯薪ボイラーの紹介用動画をアレンジし、これまでの成果を反映した3分の動画を作成しました。以下に掲載しておきます。

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こちらは、導入時に作成した薪ボイラー紹介動画です。撮影は自分、編集を道志村の友人に依頼しています。

【多摩源流小菅の湯】 薪ボイラーを活用した新たな温泉へ
2022年1月、山梨県小菅村にある「多摩源流小菅の湯」は、薪ボイラーを活用した温泉施設へ生まれ変わりました。薪は、二酸化炭素排出に該当しない再生可能エネルギー。気候変動の抑制に貢献します。また、災害停電時には近隣住民がお風呂に入れるよう、太陽光発電、蓄電池も併せて導入しています。そんな新たな多摩源流小菅の湯の取り...

最後に、新エネ大賞と脱炭素チャレンジカップの受賞者掲載ページです。

令和6年度 新エネ大賞 | 新エネ大賞-New Energy Award- | 一般財団法人 新エネルギー財団
ファイナリスト|脱炭素チャレンジカップ

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