
道志の森を食べる
人生初の「森を食べる」体験。銀座・FAROにて。

人生で初となった、「森を食べる」体験。
世界で活躍するシェフの繊細な技巧と諏訪綾子さんのインスピレーション、そして、自身が道志の森から届けた枝葉達が共演して提供される期間限定メニュー「Food Experience」。なんと、幾つかのソースには、お届けしたヒノキが含まれているという。
驚きと感動の連続で、あっという間の3時間。そもそも、3時間かけて食事に集中すること自体が稀。
日々忙しく、食事をしていても次のことを考えていることが多い日常で、妻や親しい仲間と共にあれこれ語りながら、一つのことに集中する時間を持てたことは、とても貴重だった。その価値はお金に替えられないと思う。
さらに、展覧会で提示される8種類の「記憶の香り」と連動した、8種のメニューが展開される様子は、食事というより、演劇を観賞しているようだった。提供された一品の素材や形、色彩、香りを観賞してから、さらに食べることで、自分自身の感覚で直接的に捉えることになる。「見る」という受動的な体験と、「味わう」という能動的な体験が重なることが、とても魅力的。そうすることで、体験がより個人的なものに深化し、自身の記憶を辿る回路が開けてくる。他者の意見や情報ではなく、自分自身が感じることに向き合う3時間。





FAROで食事をするのはもちろん初めて。この展覧会がなければ、銀座の高級レストランに来ることなど、一生なかったのではないか。そもそも、自分は食に対してほとんどこだわりがない・・・。レトルトのパスタでも十分満足してしまうレベル。
とはいえ、今回のコースを体験してしまうと、ごく、たまには、こんな贅沢な食事も良いなと思う。これは自分にとっても発見だった。素材の味はもちろん素晴らしいけど、このコースを提供するスタッフの方々や綾子さんの思い、繊細な配慮、高度な調理・サービス技術など、「なぜ、この料理を提供しているのか」という意味も一緒に食べている。脳で食べているとも言うのか。
特に今回は会場に綾子さんも来てくれて、エグゼクティブシェフの能田耕太郎さん、シェフパティシエの加藤峰子さんにご紹介頂き、お話する機会を得たことでFAROの姿勢についてさらに共感した。ディナーをサーブしてくれたスタッフの方も含め、皆さんが発言していたことに、森林や山の重要性や、資源の有効利用による課題解決がある。
個人的には、全く業界の異なる専門職の方々と森林のことについて関心を共有し、それぞれが異なるアプローチで表現していること、その取り組みに関われたことがとても嬉しかった。

冒頭の写真は、綾子さん、真也さん、Rawcals Crewと、シェフパティシエ・加藤峰子さんと。
料理を通じて社会課題に取り組む加藤さんにお会い出来て感激だったし、彼女が作るデザート(2品)を体験できたことも忘れられない。エディブルフラワーをふんだんに盛り込み、その造形につい見惚れてしまう一品は、食べるのをためらってしまうほど。道志の山で採取したヒノキの葉がベースに添えられ、食を彩る素材として森林資源が活用できることに深く感銘を受けた。


展覧会とディナーのコラボレーションは9月26日(土)までと、あと残りわずか。
開催中もディナーは進化し続け、先日、綾子さんから頂いた写真では、テーブル上に森が出現。
銀座で体験する、一人一人の森の記憶を刺激する味わいをぜひ、御賞味ください。









