恐怖の新築アパート1
20歳ぐらいの時の話です。
もうかれこれ15年以上前の話です。
ゾッとするような話です。
横浜に住んでいた頃、夏休みに同郷の友人と一緒に福島の実家へ帰りました。
実家でも友人と海に行ったり、バーベキューをしたり花火をしたり、肝だめしをしたりして散々遊んだ後、
また横浜の家に帰りました。その友人も一緒に僕の家に帰ってきたわけです。
学生の夏休みは長いですよね。
やがて、僕の家にあるお米を食べ尽くしてしまったんですよ。
すると「俺んちに移動しよーぜ」と友人が言うので、そうする事になりました。
湘南まで電車と徒歩で向かいました。
と、遠い。。友人宅に着いた時はもう夜でした。
キレイな新築の良い建物です。友人が初の入居者で、まだ埋まっていない部屋もあります。
久しぶりに来たなー!とにかく暑いから冷房にあたりながら漫画読もーっと!
本当にそう思っていました。僕の頭の中は平和そのものでした。
なのに。
友人が玄関を1センチくらい開けたときに、
ブ〜ン…。
え?
物凄い悪臭と無数のコバエが、
黒い煙のようにブワッと玄関から出てきたのです。
ガチャン。
友人はあわててドアを閉めました。
そして、二人は無言で顔を見合わせました。
え?どういうこと?と。
僕の心の中はこうです。
「終わった。。コイツ、絶対やらかしてる!長い夜になりそうだ…」
僕も友人も、何も言いません。
友人は頭の中を整理し、今突如として判明したこの緊急事態において、自分がしなければいけない事を組み立てているのでしょう。
おもむろに着ていたTシャツを脱ぐと、それを鼻と口元に巻き付けました。
それを見て僕も同様に、やるしかないってことですね…と覚悟を決めました。
同じく着ていたTシャツを抜いで口元に巻き付け、戦闘態勢を整えました。
よし。。
そこからは言葉も交わしません。なるべく息を吸いたくないので。
目を合わせ、1.2.3.GOのタイミングを合わせ、
友人が玄関を全開に開けました。
ブ〜ン。と黒いモヤ(コバエの大群)が部屋から出ていきます。
部屋に入り、電気のスイッチをパチ!
つ、つかない!友人に目で合図を送ると、
玄関上のブレーカーを探してガチャンガチャンやりますが、電気はつきません。
くっ、電気が止められてる。
携帯のライトで部屋を照らすと、
どうやらパーティをした後のような形跡が。
テーブル中央にある、謎のカビの塊はおそらくケーキ。
お皿にある三角っぽい、ふっくらした何かは恐らくピザ。
カビ胞子アート。奇抜なデザイン。
だけどそれは規則性のある、幾何学的な増殖をしていて何とも言えない美しさ。
い、いかんいかん!今は見惚れている場合ではない。
ここから早く米を持って脱出して、我が家に帰らなければ。
だって、電気も、おそらくガスも水道も止まっているであろうここには泊まれない。
そんな事を考えていました。
それにしてもこの涙が出るような、刺すような臭いの正体はなんだ?
どこかにラスボスがいるはずだ…。
携帯のライトで台所の方にまで行ってみました。
1番奥のコンロのうえに、鍋が置いてある。
鼻を刺すような 強い臭いがする。
アイツがラスボスか!!
と思って、近くに行ってそれを上から見ると普通の鍋。
銀色の鍋に白い蓋がしてある。
しかし、僕は次の瞬間、背筋がぞーっとしました。
その蓋の白い色が細かくウニョウニョ動いていることに気付いたから。
○☓○☓!!え?なにこれ?
白い蓋じゃなくて、透明の蓋の内側にウ○虫がびっしりついてる。
僕もまだまだです。
想像を超えていた。
キッチンでよろめきました。
キッチンマットを踏んだら、ビチャ!!え?
なんだコレ?水漏れか?
と思って、辺りを照らしても水が漏れている形跡はありません。
靴下はビチャビチャになったけど、その場でその事案は後回しにしました。
とにかく、僕達はそのラスボスの鍋を部屋の外に運び出し、
生ゴミは全部袋に入れてゴミ捨て場に出し、
米袋を部屋から運び出し、とりあえずあとはこのラスボスの鍋をどうする?という話になりました。
とりあえず、水が流れているドブで中を流さないと。この家は水が出ないんだから。
近くのドブで鍋を洗う。
もうこういう時は躊躇していても仕方ありません。
やるしかない。もう、やる事やってさっさと帰ろうとスピーディーに動きました。
何してんだ僕達は…。
「僕は今、都会のドブで、ウ○虫だらけの鍋を洗っています。お母さん。」
と田舎の母を思ったりして。生んでくれてありがとうと感謝を忘れず。
ミッションを終え、鍋を友人宅の玄関に置き、終電ギリギリで駅に駆け込み横浜に帰りました。
駅までのタクシー代で米買えたじゃねえか!と言うのはお互いに言いません。
そして、冷静になってから、
何でお前んちのキッチンマットがビチャビチャだったの?
と聞いてみました。
「いや、全然わからない」と友人が言いいました。
「ふ〜ん」とその時は気にも止めませんでした。
謎の水。
そこから、その友人に心霊現象が起きまくる事になるのです。
それはまたそのうち。
ありがとうございました!