海で溺れた話
小学生の時、モロに海で溺れた話。
僕は人生で溺れた事が2回あります。海で。
今日は1回目に溺れた時の話をしときます。
小学5年生の時でした。
家族で地引き網漁の体験に参加した時です。
そこは潮の引きがめちゃくちゃ強い所だったんです。
大人たちが調理に夢中の時間、僕は海で遊んでいました。
とにかくすごい引きで、足元の砂がどんどん流されていくような遊泳禁止の場所でした。
ふと、僕は波に足を取られてしまって、一瞬、転んでしまいました。
身体が水に浸かったと思ったら、ものすごい勢いで流されてしまいました。
僕はグルグルと波の中で回転し続けたまま、どんどん流されていきます。全く浮き上がる事が出来ません。
「ヤバイ!息が出来ない!」ともがいているうちに、ものすごい引き波でズボンもパンツも脱げてしまった。
「マ、マズイ、パンツが!!いかないでくれ!」と流されながらも必死にズボンを押さえ付けていましたが、無念…でした。
水面下で下半身が無防備になった僕。しかし、それどころではありません。
やっと水面から顔を出せた時は、砂浜からものすごく離れてしまいました。ゆうに100メートルぐらい流されてしまったのです。
海の水も大量に飲んでしまい、口の中は塩辛い。
苦しすぎて、必死に海面から顔を出せるわずかな瞬間に息を吸いました!!
「マジでヤバイ、死ぬ!」と思っていました。
深すぎて海の底が見えません。やっと浮いているのです。
「た、助け、うぷっ」という感じで声も出せません。
けど、その時なにかが聞こえた気がしました。
「大丈夫よ!」という声がはっきり頭の中に聞こえたのです。母親の声だなとその時思いました。
錯覚なのか、何なのか。確かに聞こえたんです。
きっと僕自身の生存本能が、1番安心するであろう母親の声を使って、パニックの真っ只中にいた僕を救い出したのでしょう。
とたんに冷静さを取り戻した僕は、
よ〜く考えました。まず自分に起きている状況を確認する時間を持ったのです。
数秒、じっとしてみました。一休さんみたいにポクポクチーン。
まず、溺れている自分を客観的に見るところからです。
「溺れている男子1名、引き波にのまれた様子、沖に漂っているのが現状、ゴールは無事に砂浜に戻る事、その為に取るべき行動は?」
そう考えると全てが明確になりました。
まずパニックになって、力んでバシャバシャしているから沈むのであって、
力を抜けば、下半身の衣服も無いのだから重さで沈む事はないはずです。塩水だし。
ぷかっと、浮いてみました。ダルーんと力を抜いて。
見事に浮いた!ほっ!こりゃ、ラッキー!
で、未だに流され続けているこの状況から、脱出する方法を考えました。
流されてきたルートはひき潮が強すぎて戻れない。じゃあ、とりあえず横に泳ごうと思いました。
そう思ったとき奇跡が起きました!
ズボンがプカプカ浮いているのを発見したのです!
それをガッチリつかみました!
とったどー!!!とは言いませんでしたが、
僕の中で生存シナリオが確定した瞬間でした。
やった!これはもう死亡フラグは消えた!
正しい道だったからアイテムが出てきたに違いありません。
間違えてたら、サメが出てきたりするんでしょうきっと。
生還パターンきた!さて、そこでまた選択肢が出てきます。ズボンを履くか履かないか。
履きません。というか履けないし。
とりあえず、ズボンの足の部分とTシャツのスソを結んで、僕は泳ぐことにしました。
ゆっくりと横にスライドしていきました。
そして必死に泳いでいるうちに、ひき潮ゾーンから脱しました。
そこは波もない穏やかな海でした。深すぎて足なんか全くつかないですが、
力を抜いていれば沈まない事を知っているので、怖くもなんともありません。
よっしゃーここからなら泳げる!と小学生の僕は思いました。
波のない海を泳ぐことは楽勝でした。300メートルぐらいかなと思って、ゆっくりクロールで泳ぎました。
波が出てくると、その波に乗って楽に前に進めました。
しばらく自力で泳いでいると、サーファーが、
「え?キミ、どこから来たの?大丈夫?」
と声をかけてくれました。
必死すぎて全く気が付きませんでしたが、人がいるエリアまで戻って来れたのだとわかって嬉しくなりました。
「助けて!」と言うと、僕を掴んで泳ぎ、足が着く所まで連れて行ってくれました。
お礼を言って、真っ先にズボンを履きました。
そして走って家族のもとに戻りました。
「アハハハ〜大冒険して、生還したよー!」
と自分はヒーロー気分で帰りましたが、そういうテンションではなかったようです。
両親は僕が流されるのを見ていたらしく、もう少しで警備艇が出るところでした。
めちゃくちゃ怒られたのを覚えています。まあ、仕方ないですね。
その時、僕が学んだ事は、
ヤバイ時ほど冷静になる必要性です。これはめちゃくちゃ大事。
パニック時はまともな判断が出来ませんからね。
冷静さを取り戻すと、いくつかの選択肢が目の前にある事に気が付きます。
そして、そういう時は1つ1つの選択を間違えないこと。間違えると多分、死に直結します。
自分の持つ知識で解決出来ない事は、決して起こりません。だから、冷静に考えれば間違える事はありません。
そしてゴールまでのイメージを持ったら、その後は決して諦めないこと。
それを教訓として学びました。
あと、そもそも遊泳禁止の海はめちゃくちゃ怖いよってこともね!
良い子は真似しないように!
ありがとうございました。